6万円前後で始める星雲撮影『Seestar S30』レビュー メシエ天体を自宅ベランダから

東京の明るい空、それも雲の残る自宅ベランダから、40分ほどで赤く輝く「M17 オメガ星雲」を撮影できました。
使ったのは、スマートフォンから操作する小型スマート望遠鏡「Seestar S30」。星座もほとんど知らない状態から、天体を選ぶだけで自動導入、追尾、撮影、スタック処理まで行ってくれます。
生産終了で在庫限りとなったS30を購入し、実際に2晩使ってみました。
■Seestar S30を購入

こんにちは、店員佐藤です。
今回はソニー製品の紹介ではありません。「ZWO Seestar S30」というスマート望遠鏡の試用レポートです。
製品は2025年2月発売のもので、発売から1年半ほど経ちます。発売時から興味があって7万円台で販売されていたのですが、現在Vixen公式サイトでは『生産終了・在庫払底』と案内されています。一方、Amazonでは8月8日時点で6万円前後で販売されていたので、夏休み前に購入してみました。
こちらは8月8日時点での販売価格になります。私が購入したときは61,000円だったので、そこからさらに価格が下がったようです。
Seestarは中国・蘇州のZWOが展開するスマート望遠鏡で、日本国内ではVixenが取り扱っています。
価格が下がったというのも購入理由のひとつですが、もうひとつ、今年のXperiaの販売活動の中で知り合った方で、本格的な星雲撮影をされている方がいらして、その方の影響もかなりあります。

本格的な天体撮影では、望遠鏡、赤道儀、カメラなど複数の機材が必要になり、撮影したデータの後処理にも知識が必要になりますが、このSeestar S30は、それらをオールインワンでこなしてくれます。
操作するためのスマートフォンさえあれば大丈夫。
晴れ間のある夜に2回ほど試してみましたので、その様子を紹介したいと思います。
購入した「Seestar S30」はキャリングケースに入り、小型三脚同梱で到着しました。充電に使うUSBケーブルも同梱になっています。
内蔵バッテリーは6000mAh(約22.2Wh)の容量になっています。実際の駆動時間は撮影条件やレンズヒーターの使用状況などによって変わるため、長時間撮影ではモバイルバッテリーも用意しておくと安心です。
昼間にひとまず充電して夜に備えます。
■東京のベランダからM17を撮影
Seestar S30本体底面の三脚ネジ穴は3/8インチで、一般的なカメラ用三脚などで使われる1/4インチとはサイズが異なります。今回は3/8インチ→1/4インチの変換アダプターを使い、カメラ用三脚に取り付けてベランダに設置しました。
天体撮影をデジタル一眼αで行っている方だと赤道儀を使ったこともあると思います。赤道儀の場合は北極星を見つけてそこに軸を合わせて設置する必要がありますが「Seestar S30」はそういうことは気にせず、水平だけ出して設置すればOKです。方角の設定などもありません。
※撮影時に経緯台モードを利用する場合です。より長時間撮影ができる赤道儀モードもあり、その際は方角や角度の調整が必要になります。
Xperiaにアプリをインストールして、購入した「Seestar S30」を接続します。
ホーム画面から浅い階層のところはすべて日本語になっていました。深い階層に入ると解説文などは英語になります。Seestar S30本体の音声案内は日本語で出力されていましたが、アプリ側の音声案内を日本語に変更する設定は、今回の試用では見つけられませんでした。
さて、ここからがすごいところです。星座もろくに知らない私が、いきなり星雲を撮りたい、深宇宙の世界を自分で覗いてみたい、と、言っても、何から撮れば良いのかわからないんですが、アプリを開けば「現在のおすすめ天体」ということで、見頃の天体をピックアップして教えてくれます。
我が家のベランダは南西方向を向いているので、南西の方角で観られる天体を探します。
よくわからないのですが、この「M17」というものであれば、このときにベランダから見えてそうなので選択。「観測する」というボタンを押すと、自動で望遠鏡を天体に向けていき、微調整をしてフォーカスまで合わせてくれます。
今回は細かな撮影設定を触らず、そのまま自動撮影に任せました。
方角とか調整していないのに、自分でそれを探して、あとは天体撮影をして目的の天体を見つけてしまうってすごい!
さらに、ここからもすごいんですけど、撮影が始まるとスタック撮影といって、今回の設定では10秒露光の画像を連続で撮影し、スマート望遠鏡の中で合成処理していきます。これにより、最初はなにも写っていなかった空に徐々に星が見えてきて、星雲もうっすらしていたものがはっきりとした形になっていきます。
上記はXperiaの画面をスクリーンショットで記録したものですが20秒、5分後、15分後で徐々に高画質になっていくのがわかります。
■メシエカタログを楽しむ
40分の撮影で出力されたのがこちらの画像になります。M17、いて座の散光星雲:オメガ星雲/馬蹄形星雲/白鳥星雲と呼ばれています。
「M17」の“M”は、18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエ(Charles Messier)の頭文字です。メシエは彗星を探す中で、彗星と間違えやすい星雲や星団などを記録し、「メシエカタログ」としてまとめました。現在はM1からM110まで110天体が知られています。
もともとは彗星探しのための実用的なリストでしたが、200年以上たった今でも、天体観測では定番中の定番。Seestarのような最新のスマート望遠鏡でも「M17」「M31」「M42」といった番号で天体を探します。
18世紀に作られた天体リストを、現代の私たちが同じ番号を頼りに夜空を楽しんでいる。そう考えると、ちょっとしたロマンを感じます。
なお、撮影したときの空模様はご覧の感じです。すっきりと晴れ渡っているわけでもなく、南の方には東京都内の明かりもあるので、条件的には非常に厳しい空です。双眼鏡で見ても明るい星が点々と確認できる程度の空模様なんですが、それを長時間かけて撮影して、ここまで見えるのってすごくないですか!?
Seestar S30は、口径30mm・焦点距離150mm・F5の3枚玉アポクロマート光学系を採用し、撮像センサーにはソニー製「IMX662」を搭載します。IMX662は1/2.8型、2.9μm画素の高感度センサーで、望遠側の画角は約2.46°。このほか約23.2°の広角カメラも備えています。
αユーザーさん向けにイメージすると、Seestar S30は小型の1/2.8型センサーに、実焦点距離150mmの望遠鏡を組み合わせた構成です。センサーが小さいため写る範囲は狭く、35mm判換算では約1000mm相当の超望遠レンズに近い画角になります。
これをスタック撮影で使うことで、天体望遠鏡、カメラ、自動導入・追尾、画像処理といった機能を小さなボディひとつで楽しめるわけです。
撮影中もずっとアプリを起動して撮影画面を表示しておく必要はなく、撮影時に「M17」の解説を読んだり(英語ですが)、天体図をみて、次に撮影する天体を探したりすることもできます。
また「撮影プラン」という簡単なプログラム機能も装備していて、時間ごとにどの天体を撮影するのか設定して、あとはほうっておくと、翌朝まで指示通りの時間に天体撮影を行うということができます。
雲などで条件の悪いフレームがスタックに採用されないこともあり、撮影プランを使えば長時間の自動撮影ができます。ただし屋外での運用なので、雨や強風など天候の急変には注意が必要です。
ということで、1時間ごとに撮影する天体を変えて撮ったものがこちらです。「M8」「M16」「M20」などが、この時期は南西の空で撮影できました。
アンドロメダ星雲はM31で現在は銀河系の外にある独立した銀河だと分かっているので、「アンドロメダ銀河」と呼ぶのが一般的なんだそうです。北東から東側にあがってくるので、南西向きの我が家のベランダからは撮ることができないのですが、どこか出かけたときに狙いたいところ。
ウルトラマンの故郷「M78星雲」も実在しているのですが、こちらはオリオン座なので夏の今は撮影シーズンではありません。冬になれば南の空に上がってくるので、我が家のベランダからS30で十分狙えます。「Seestar S30でウルトラマンの故郷“M78星雲”を撮ってみた」という記事が半年後に公開できるかもしれません。
■S30 Proとの違い
「Seestar S30」の本体質量は約1.65kgで天体望遠鏡を持ち運ぶことを考えれば超軽量超小型望遠鏡になります。
ケースのサイズは300×185×100mmですので、カメラバッグに入れる、というよりはザックに入れて持ち運ぶ感じになるかと思いますが、デジタル一眼αでの天体撮影のついでに持ち歩くのには、それほど邪魔にならないサイズかと思います。
なお、製品のラインナップですが「Seestar S30」のあとに「Seestar S30 Pro」という上位機種が今年の4月30日に発売されています。
30mm口径はS30と同じですが、望遠側は160mm F5.3の4枚玉アポクロマートとなり、Sony IMX585を搭載。さらにIMX586を使った6mm F1.75の広角カメラを備え、天の川や星座まで撮影できるようになりました。予約開始後はVixenの当初想定を上回る注文があり一時受注停止となりましたが、6月12日に受注を再開しています。S30 Proは広角撮影と高画質化を強化した上位モデルです。
「Seestar S30」の価格が購入しやすくなっていたこともありますが、この夏休みにペルセウス座流星群の撮影で遠出する予定なので、そのときに一緒に楽しめたら、というのと、これから1年かけて「メシエカタログ」の撮影にチャレンジできるかな?ということで買ってみました。
この夏のペルセウス座流星群の撮影ついでに、メシエカタログの天体撮影も楽しんでみるのはいかがでしょうか?
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